レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 | 東京都美術館
先日、東京都美術館で開催されているエゴン・シーレ展に行ってきました。(会期は2023年4月9日まで)
いまだに休日でお天気の上野にはたくさん人がいるということを毎回忘れては新鮮に驚いています。
エゴン・シーレ展も例にもれずかなりの盛況で、当日券は買えたものの展示室の中はたくさんの人の熱気で溢れていました。
※この文章は個人の感想であり、正解や作り手の意図を探るものではありません。
また、これを読むあなた固有の鑑賞体験を阻害しようとするものでもありません。
そもそもエゴン・シーレって?
エゴン・シーレ(1890-1918)
オーストリアの画家。
「接吻」を代表作とするクリムトの影響を強く受けていることで有名です。
世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーンで活躍した画家。わずか28年という短い生涯の間に鮮烈な表現主義的作品を残し、美術の歴史に名を刻んだ。
最年少でウィーンの美術学校に入学も保守的な教育に満足できず、退学して新たな芸術集団を立ち上げる。当時の常識にとらわれない創作が社会の理解を得られずに逮捕されるなど、孤独と苦悩を抱えながら、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出した。
(エゴン・シーレ展公式サイトより引用)
展示について
私はシーレについて詳しくなく「自画像ってあんまり興味ないんだよな〜」と乗り気ではなかったのですが、友人の評判や家長むぎさんがおすすめされていたことが足を運ぶきっかけになりました。
日本での大規模なエゴン・シーレの展示は約30年ぶりとのことで、かなりメディアでも大きく取り上げられていましたね。
本展は、エゴン・シーレ作品の世界有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、ドローイングなど合わせて50点を通して、画家の生涯と作品を振り返ります。加えて、クリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとする同時代作家たちの作品もあわせた約120点の作品を紹介します。夭折の天才エゴン・シーレをめぐるウィーン世紀末美術を展観する大規模展です。
(エゴン・シーレ展公式サイトより引用)
展示は「シーレを中心としたウィーン世紀末美術展」といった印象。
章立てとしてはシーレの人生をなぞりつつ、モチーフごとに分類していますが、シーレ以外の作家もオスカー・ココシュカなどは作家ひとりをフィーチャーした章がありました(逆にクリムトの章がなかったのが意外)。
シーレは時代性の影響が色濃く出ていますし、オーストリアの画家といえば!といった面々の作品を包括的に見ることができたのはとても贅沢でした!
エゴン・シーレについて
さすがあのクリムトに「才能がありすぎる」と言われるだけあって、幼少期から絵がうまい!
実父が亡くなったのちにシーレの後見人となった叔父を描いた「レオポルト・ツィハチェックの肖像」は当時17歳とは思えないほどの描写力。人となりがポーズや表情から伝わってくるよう。陰影の付け方もかっこいい!光のあたってる方の背景が黒で、あたってない方が白なのも好き。
絵画の基礎となる描写の力をシーレはかなり早くから持っていたんだなと思いました。これは特別扱いでアカデミーに合格するわ…。
私が今回来ていたシーレの作品の中で一番気になったのは「横たわる女」(女性のヌードの作品なのでリンクを開く際はお気をつけて!)。
1917年なので、死の前年に制作された作品です。
黄土色の画面の中央に横たわる女性、そして彼女の下に敷かれた白い布。モチーフの輪郭ははっきりとした青のラインで縁取られ、画面にリズム感を生み出しています。
シーレの人物画は、肌の中の青と赤が混じったうねるような筆致が特徴ですが、この作品もその点が顕著。
画集やポストカードではかなり肌の色が背景の黄土色に沈んで見えるのですが、実物はポイントの赤が引き立って生き生きとした美しさがありました。これだけでも美術館で見られてよかったー!
同じ女性の裸体がモチーフでもルネサンス絵画の神聖さとは違い、より生々しく、人の肉の柔らかさが手に取るように伝わってきます。
特に太もも!「頭を下げてひざまずく女性」もそうですが、シーレはかなり女性の太ももの描き方にフェチズムを感じますね。
強い輪郭線からくる平面感と、縁取りの中の生々しさとのアンバランスさ。絵画の中に蠢く血管と流れる血があるようで、とても好きになった作品です。
全体の感想として、短いその生涯や自画像の印象から「孤独と苦悩の画家」として見られがちなシーレですが、むしろ安定した評価と生活があったからこそ世紀末の時代の空気とともに自分自身にひたすら向き合うことができたのではないかと個人的には思います。
また、シーレの作品はどれも100年以上前に描かれたとは思えないようなおしゃれさがあり、洗練された色彩や構成、筆致が現代でもなお人気がある理由なのかなと感じました。
シーレ以外に気になった画家について
私がシーレ以外に気になったのは、ウィーン分離派創設メンバーのカール・モル。
今回の展示で初めて知った方なのですが、木版画も油絵も澄んだ空気感。静かな日常を切り取ったような、静謐で柔らかな雰囲気がとても素敵でした。
またどこかで見られたらいいな。
3/18〜4/2は18歳以下の方は都立美術館・博物館が入場無料になるそうなので、春のお出かけにぜひ訪れてみてください!