「インターフェアレンス」展 | 銀座メゾンエルメス フォーラム

2枚目のレポートは、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催されている「インターフェアレンス」展についてです。(会期は2023年6月4日まで)

銀座メゾンエルメス フォーラムとは文字通り、エルメス財団の運営するアート・ギャラリー。
毎回「私が銀座のエルメスに…!?」とそわそわした気持ちで、9階まで上がるエレベーターに乗っています。(エレベーターの係の方も、みなさんすごく恭しく接してくださるのでそれもそわそわします)

※この文章は個人の感想であり、正解や作り手の意図を探るものではありません。
また、これを読むあなた固有の鑑賞体験を阻害しようとするものでもありません。

 

「インターフェアレンス」展 とは

エルメス財団は、光、振動、波動など、身体に介入するゆらぎの感覚を通じて、知覚探究を試みるアーティストによるグループ展「Interference(インターフェアレンス)」を開催いたします。4人のアーティストによる作品は、それぞれ、ミニマルな美意識の中に潜む身振りを通じて、私たちの身体に日常的に干渉している出来事の微細な尺度や境界を浮かび上がらせます。私たちは、作品から呼び起こされる生理的現象や感覚によって身体や器官を再認識し、また作品同士の相互干渉から生まれる新たな波長によって、メディテーションへと導かれるでしょう。
(「インターフェアレンス」展 公式ページより引用)

「Interference」とは「干渉・妨害」といった意味。
身体と感覚に関する作品を制作するフランシス真悟さん、スザンナ・フリッチャーさん、ブルーノ・ボテラさん、宮永愛子さんの4名によるグループ展です。

今回はその中から、フランシス真悟さんとスザンナ・フリッチャーさんの作品の感想を記録します。

「Interference」/フランシス真悟

「Interference」は、今回出展されている光干渉顔料を用いたシリーズのタイトルでもあるそうです。構成としてはシンプルで、正方形の画面に円が描かれているだけなのですが、それを描く光干渉顔料がすごい。

見る角度によって色が繊細に変化していき、それがギラギラした玉虫色のような変化ではなく、サラサラと光の粒子が砂時計のように落ちたり登ったりしていくような不思議な感覚。

私は、他人が見ている色というものと自分が見ている色が同じだという確信はどこにもないなという考えを持っているのですが(答え合わせの方法がないので)、色とは単に光の屈折であるということを改めて認識させられる作品でした。

「私が今見ている色と隣の人が見ている色は違う」「しかし1つの同じ作品である」ということは、なんだか浮き足立つような、違ってもいいのだと安心するような不思議な感覚でした。

階段をおりた8階にある作品は必見です!(見た瞬間「おわー!」って声が出て慌てて口をふさぎました)

「Pulse」/スザンナ・フリッチャー

スザンナ・フリッチャー(1960年ウィーン生まれ)は、ガラスブロックの構造に呼応した環境にめぐらされた、半透明の雨のような糸で空間を満たします。モーターからもたらされる振動や周波は、極細の素材が伝える振動の干渉によって、サウンドの変化としても現われます。同調し、打ち消しあい、鼓動し、周期的なリズムへと加速することで、音域外の聴覚へといった私たちを誘いだすでしょう。
(「インターフェアレンス」展 公式ページより引用)

インスタレーションの説明って難しい…!
展示室に上下に張られたシリコンの半透明な糸が振動や周波で震えるさまを9階では上から、8階ではその糸の間を通りながら観賞することができます。
シリコンの糸が震えると反射したした光が上から下へと流れていくのですが、それを見て自分の脳の浅いところでは「雨が降っている」と判断し、深いところでは「細い線状の光が上下に移動すると自分は雨が降っていると錯覚するんだな」と冷静に考えている。そしてそれをさらに俯瞰して見ている自分がいる。
自分が、というよりも人間はどうやって何を見て判断をしているんだろう?音なのか?光なのか?それとももっと違う感覚なのか?それはどれくらいの変化で変わるのか?感覚の不思議さと面白さを同時に味わえる作品です。

 

どの作品もまさに「干渉」で、エコー検査のように「自分は一体何を尺度にしているのか、境界線を引いているのか」ということが見えてきて、だから美術が好きなんだよなと改めて思った展示でした。

会期も長いので、ぜひ銀座に用事がある際は訪れてみてください!

「インターフェアレンス」展公式ページ